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忘れられる、キスを
第8章 約束
「もう、なんであんなことするの!」

病院を出て開口一番、先輩が文句を言う。
心なしか、顔が紅い。

「先輩、寝てたから…隙あり、ってやつ?」
「ふ、ふつうに起こせばいいでしょ…!」
「あれでも我慢したんだけどなー」

先輩の香り満載のマフラー巻かれてからもうずっとムラムラきてるのだ。
あのくらい、勘弁してほしい、と思うのは我儘か。
自分がどんだけ俺のこと煽ってるか、分かってる?
そう言ってやりたいけど、言っても無駄なのでぐいっと飲み込む。

家に戻ると、先輩は小さなメモを渡してくれた。
あのお粥の作り方が書いてある。
胃腸の調子が完全に戻るまではあまり他のものを食べたいと思えないからありがたい。

ほんと、ここまで面倒をみてくれるなんて、母親か、恋人くらいな気もする。
普通、「先輩」ってだけじゃ、やんないよな…
そんな優しくされると、俺、期待しちゃうよ?
てか、やっぱり、我慢できない。

「先輩、俺、やっぱ、先輩のこと、好き」

こんなに好きだのなんだの言うのも珍しいなあ、俺にしては…と頭の片隅で思う。
なんだかよくわかんないけど、えっちゃん先輩は抱きしめたくなるんだ。

「ん…星くん…離し…て」
「やだ」

俺の身体を押し返す。
そんなんじゃ、俺からは逃れられないよ?

薄い唇を塞いで、身体を弄る。
セーターの下から手を入れると、びくりと肩が震えた。
上まで捲って、下着を露わにする。
以前に付けた痕はもうほとんど残っていない。
あの日を思い出して、すぐには消えない痕を残す。

「や…ほし、くん…」

か細い声。
構わず、首筋、胸、お腹…と紅く痕を付ける。
小さな胸を包む水色の下着に手をかけた、その時。

「ーーーーーッ!!」

タイミングを図ったかのように、物凄い腹痛に襲われて、俺は慌ててトイレに駆け込んだ。



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