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忘れられる、キスを
第8章 約束
土曜診療を行う病院は三駅ほど離れた場所にある。
「大丈夫?辛かったら言ってね」
「先輩と、手、繋いでるから、落ち着いてる」
先輩は怪訝そうな顔でこちらを見ていたが、事実、家を出てからは、きりきりとした腹の痛みも治まっている。
相変わらず、握り返してはくれなかったが、肩をぴったりと寄せ合い、まるで恋人同士のように並んで歩く、ただそれだけにじんわりと幸せを感じた。
正直、今までならここまで誰かとぴったり寄り添って歩くことはなかった。
中学、高校、大学、とそれぞれ何人かと恋人のような関係にもなったが、俺自身はそれほど相手に強い執着はなかったし、腕を絡め、互いを片時も離すまいとして歩くようなカップルには嫌悪さえあった。
べたべたした関係は嫌だった。
ところがどうだ。
最近の俺ときたら。
暇さえあれば先輩の事ばかり考えて、夢想して。
隙あらば、手を取り、腰を取り、唇を奪い。
ちょっとしたことでドキドキするのは、中学生のようでもあり。
あわよくば、彼女の身体を貪ろうとするのは野獣のようでもあり。
なんでこんなに執着してしまうのか、自分でも分からない。
失礼な話だが、先輩は、巨乳でもないし(むしろない)、絶世の美女でも、アイドルなみの美少女でもない。
少し年齢より見た目は幼いが、ごく普通の女性だ。
なのに。
なんでかな。
病院は土曜日ということもあり、子どもは多くいたが、それほど待たされることもなく、診察室に通された。
診てくれたおじいちゃん先生は「腹出して眠ったんか?」と店長と同じことを言って、整腸剤ともしものときの下痢止めを出してくれた。
待合室に戻ると、待ちくたびれたのか、先輩は長椅子に座ったまま、うつらうつらと浅い眠りの中にいた。
気付いたら、さらさらとした黒髪に隠れた横顔に、思わず口付けていた。
「大丈夫?辛かったら言ってね」
「先輩と、手、繋いでるから、落ち着いてる」
先輩は怪訝そうな顔でこちらを見ていたが、事実、家を出てからは、きりきりとした腹の痛みも治まっている。
相変わらず、握り返してはくれなかったが、肩をぴったりと寄せ合い、まるで恋人同士のように並んで歩く、ただそれだけにじんわりと幸せを感じた。
正直、今までならここまで誰かとぴったり寄り添って歩くことはなかった。
中学、高校、大学、とそれぞれ何人かと恋人のような関係にもなったが、俺自身はそれほど相手に強い執着はなかったし、腕を絡め、互いを片時も離すまいとして歩くようなカップルには嫌悪さえあった。
べたべたした関係は嫌だった。
ところがどうだ。
最近の俺ときたら。
暇さえあれば先輩の事ばかり考えて、夢想して。
隙あらば、手を取り、腰を取り、唇を奪い。
ちょっとしたことでドキドキするのは、中学生のようでもあり。
あわよくば、彼女の身体を貪ろうとするのは野獣のようでもあり。
なんでこんなに執着してしまうのか、自分でも分からない。
失礼な話だが、先輩は、巨乳でもないし(むしろない)、絶世の美女でも、アイドルなみの美少女でもない。
少し年齢より見た目は幼いが、ごく普通の女性だ。
なのに。
なんでかな。
病院は土曜日ということもあり、子どもは多くいたが、それほど待たされることもなく、診察室に通された。
診てくれたおじいちゃん先生は「腹出して眠ったんか?」と店長と同じことを言って、整腸剤ともしものときの下痢止めを出してくれた。
待合室に戻ると、待ちくたびれたのか、先輩は長椅子に座ったまま、うつらうつらと浅い眠りの中にいた。
気付いたら、さらさらとした黒髪に隠れた横顔に、思わず口付けていた。