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忘れられる、キスを
第10章 マフラー
俺たちは近くの安い居酒屋に入った。
金曜日ということもあり、店内は活気にあふれていた。
就活の状況や最近仕入れた友人らの噂話。
他愛のない話が続く。
「あ、そういえば、さっき、駅でえっちゃん先輩みた」
「えっ…ちゃん先輩…?」
唐突に出てきたその名前に、むせこんでしまう。
「なんか、男といたよ。彼氏かな」
「そうなんだ」
男…まさか倉田先輩か…?
動揺したのを悟られたくなくて、素っ気ない態度を取る。
「なんだ、反応薄いな。リュウ、えっちゃん先輩と仲良かったんじゃないの?」
「ふ、ふつーだよ…第一、うちのサークルみんな大体仲良いじゃん」
「そうだけどさ、おれ、てっきりリュウはえっちゃん先輩のこと好きなんだと思ってたから」
あ。
バレてる?
そんな素振り、えっちゃん先輩の在学中見せてたっけ?
「最後の演奏会で、お前、えっちゃん先輩だけはリハーサルからずっと見てたし、そもそも、サークル入ってからすぐ彼女と別れたからさー」
俺の表情を読んだかのように弘樹が喋る。
たしかに、高校から付き合ってた彼女とは大学入学後、しばらくして別れた。
それは単に、遠距離の煩わしさから逃げただけだ。
えっちゃん先輩を気にし始めたのはその後。
でも、それすらもバレたくなくて、俺は何気なく話題を変えた。
結局、なんだかんだとダラダラ飲み続け、気付けば終電間際となっていた。
弘樹と別れ、一人早足で駅へと向かう。
久し振りに飲んだビールは、疲れもあってか、思ったより回っているようだ。
プラットホームを駆け抜ける風が酔って火照る顔に心地よい。
ふと、反対側のホームをみる。
疎らな人の中に、見知った姿を見つけ、俺は思わず携帯を手に取った。
金曜日ということもあり、店内は活気にあふれていた。
就活の状況や最近仕入れた友人らの噂話。
他愛のない話が続く。
「あ、そういえば、さっき、駅でえっちゃん先輩みた」
「えっ…ちゃん先輩…?」
唐突に出てきたその名前に、むせこんでしまう。
「なんか、男といたよ。彼氏かな」
「そうなんだ」
男…まさか倉田先輩か…?
動揺したのを悟られたくなくて、素っ気ない態度を取る。
「なんだ、反応薄いな。リュウ、えっちゃん先輩と仲良かったんじゃないの?」
「ふ、ふつーだよ…第一、うちのサークルみんな大体仲良いじゃん」
「そうだけどさ、おれ、てっきりリュウはえっちゃん先輩のこと好きなんだと思ってたから」
あ。
バレてる?
そんな素振り、えっちゃん先輩の在学中見せてたっけ?
「最後の演奏会で、お前、えっちゃん先輩だけはリハーサルからずっと見てたし、そもそも、サークル入ってからすぐ彼女と別れたからさー」
俺の表情を読んだかのように弘樹が喋る。
たしかに、高校から付き合ってた彼女とは大学入学後、しばらくして別れた。
それは単に、遠距離の煩わしさから逃げただけだ。
えっちゃん先輩を気にし始めたのはその後。
でも、それすらもバレたくなくて、俺は何気なく話題を変えた。
結局、なんだかんだとダラダラ飲み続け、気付けば終電間際となっていた。
弘樹と別れ、一人早足で駅へと向かう。
久し振りに飲んだビールは、疲れもあってか、思ったより回っているようだ。
プラットホームを駆け抜ける風が酔って火照る顔に心地よい。
ふと、反対側のホームをみる。
疎らな人の中に、見知った姿を見つけ、俺は思わず携帯を手に取った。