この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられる、キスを
第12章 真夜中
反対側のホームの隅のほうで、鳴り続ける携帯を見つめて座る姿を見付け、声を掛けた。
下から俺を見つめる顔は、今にも泣き出しそうだった。
膝丈のふんわりとしたシフォンのスカートに薄いブルーのニット、肩まで伸びた髪はハーフアップ。
紺のリボンの付いた髪飾りが控えめについている。
耳朶には小さなパールのイヤリング。
頬はほんのり桜色。
ほんの一ヶ月と少し、会っていなかっただけなのに、先輩は、はっとするくらい綺麗になっていた。
これってやっぱり、倉田先輩が関係してる…?
でも、なんで、そんな顔してるの…?
「先輩、今日、可愛いっすね。デート、とか?」
俺の問いかけに、ぴくりと反応するが、答えはない。
俯いて、今にも泣き出しそうな先輩に、思わず手を握りしめてしまう。
離して、と振り解こうとする先輩の左手を強く掴む。
きっと、また、一人で泣くんだ、この人は。
一人で泣くなって、言ったのに。
俺のこと、頼ってくれてもいいのに。
そう思ったら苛々とした気持ちがせり上がって来た。
どうして、そんな顔してるの。
何が悲しいの。
聞きたい。
けれど、聞けばこの場で泣き出してしまいそうで。
俺は戸惑う先輩の手を引き、ホームに滑り込んできた電車に乗り込んだ。
下から俺を見つめる顔は、今にも泣き出しそうだった。
膝丈のふんわりとしたシフォンのスカートに薄いブルーのニット、肩まで伸びた髪はハーフアップ。
紺のリボンの付いた髪飾りが控えめについている。
耳朶には小さなパールのイヤリング。
頬はほんのり桜色。
ほんの一ヶ月と少し、会っていなかっただけなのに、先輩は、はっとするくらい綺麗になっていた。
これってやっぱり、倉田先輩が関係してる…?
でも、なんで、そんな顔してるの…?
「先輩、今日、可愛いっすね。デート、とか?」
俺の問いかけに、ぴくりと反応するが、答えはない。
俯いて、今にも泣き出しそうな先輩に、思わず手を握りしめてしまう。
離して、と振り解こうとする先輩の左手を強く掴む。
きっと、また、一人で泣くんだ、この人は。
一人で泣くなって、言ったのに。
俺のこと、頼ってくれてもいいのに。
そう思ったら苛々とした気持ちがせり上がって来た。
どうして、そんな顔してるの。
何が悲しいの。
聞きたい。
けれど、聞けばこの場で泣き出してしまいそうで。
俺は戸惑う先輩の手を引き、ホームに滑り込んできた電車に乗り込んだ。