この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられる、キスを
第12章 真夜中
電車に乗り、二人ならんで座っても、先輩は終始無言だった。
もう、手を振り解こうとはしなかったが、一旦離してしまえば、消えてしまいそうで、俺は離すことができなかった。
何を言えば良いのか分からず、俺もただ、隣にいることしかできなかった。
息苦しい沈黙が流れる。
「あの…」
ぽつり、と先輩が言って、俺を見る。
「星くん、反対方向、でしょ…?終電、間に合わない…」
「大丈夫、明日休みだし。適当に帰るから」
「でも…」
先輩は何か言いたげだったが、また視線を落としてしまう。
「今のえっちゃん先輩を一人にするの、いやだから」
「………」
「泣くなら、俺、帰らない」
俯いた表情は分からない。
電光掲示板が、あと、二駅で先輩の最寄り駅に着くことを示している。
「泣かないってば」
そう言って、先輩の右手がきゅっとスカートを握る。
指先が、震えている。
電車の速度が落ち、シューッという音と共に扉が開く。
人も疎らなホームに降り、改札を出ようとしたところで先輩が立ち止まる。
「星くん、もうここで大丈夫だから」
「だめ。夜中だし、危ないから、家まで送る」
左手を握りしめ、駄々をこねるように言う俺を先輩がたしなめる。
「帰りなよ。この後の電車なら間に合うから」
電光掲示板は最終電車の到着を知らせている。
「だめ。家まで送る」
もう一度言って、先輩の手を強引に引いて改札を出た。
もう、手を振り解こうとはしなかったが、一旦離してしまえば、消えてしまいそうで、俺は離すことができなかった。
何を言えば良いのか分からず、俺もただ、隣にいることしかできなかった。
息苦しい沈黙が流れる。
「あの…」
ぽつり、と先輩が言って、俺を見る。
「星くん、反対方向、でしょ…?終電、間に合わない…」
「大丈夫、明日休みだし。適当に帰るから」
「でも…」
先輩は何か言いたげだったが、また視線を落としてしまう。
「今のえっちゃん先輩を一人にするの、いやだから」
「………」
「泣くなら、俺、帰らない」
俯いた表情は分からない。
電光掲示板が、あと、二駅で先輩の最寄り駅に着くことを示している。
「泣かないってば」
そう言って、先輩の右手がきゅっとスカートを握る。
指先が、震えている。
電車の速度が落ち、シューッという音と共に扉が開く。
人も疎らなホームに降り、改札を出ようとしたところで先輩が立ち止まる。
「星くん、もうここで大丈夫だから」
「だめ。夜中だし、危ないから、家まで送る」
左手を握りしめ、駄々をこねるように言う俺を先輩がたしなめる。
「帰りなよ。この後の電車なら間に合うから」
電光掲示板は最終電車の到着を知らせている。
「だめ。家まで送る」
もう一度言って、先輩の手を強引に引いて改札を出た。