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忘れられる、キスを
第12章 真夜中
「ご、ごめんね…昨日は…」
「別に。俺が勝手にやったことだし」

俺が顔を洗っている間に、テーブルの上にはすっかり朝食が用意されていた。
ベーコンエッグにレタスとキュウリのサラダ、きつね色に焼きあがったトーストに手作りらしきイチゴジャム。
ふわふわと湯気をたてるコーヒーに、先輩のお気に入りらしいアロエヨーグルトまでついている。

あー…先輩と結婚したら、毎朝こんな…

またしてもよからぬ妄想がよぎる。

「でも…身体痛かったでしょ…それに…シャツ汚しちゃったし…」

確かに俺の胸のあたりには、先輩のファンデーションらしき跡が残っていた。

「別に、こんくらい、どうってことないすよ。洗えばいいし」
「でも…」

しゅん、とした様子の先輩も可愛い。
……じゃなくて。

「先輩、今日は暇?」
「う、うん…」
「じゃあ、先輩の今日、俺にちょーだい。それで昨日のことは全部チャラ。いいでしょ?」

先輩はどういうこと?と、怪訝そうな顔。
俺はそんな先輩を尻目にトーストにかじりついた。

「俺、一旦帰って、着替えてくるから。そしたら、S駅で待ち合わせね」
「どこかいくの…?」
「スカッと気持ちイイこと、しよ」

俺の言葉に、先輩の顔がますます困り顔になった。




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