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忘れられる、キスを
第12章 真夜中
目を覚ますと、まだ腕の中には先輩がいた。

「先輩…?えっちゃん先輩…朝ですよ…」
「ん……」

少し身じろいで、先輩がぼんやりと目を開ける。

「おはようございます」
「お、おはよ……わっ…え、ほ、星くん…?!」

驚いて、先輩が俺から離れようとする。
泣き疲れて寝落ちした先輩の顔はかなり酷い。
泣き腫らした目に、頬にはまだ、涙の跡が残っている。

「よく眠れた?」
「え、と、あの…」
「昨日、いっぱい泣いて、そのあと寝ちゃったんだよ先輩」

見る間に顔を紅く染める。

「か、か、顔、洗ってくる…!」

俺の腕からするりと抜けて洗面所へ向かう。
俺は立ち上がり、ぎゅうっと伸びをした。
さすがに床の上で座って眠ると、身体が痛い。
腰や肩を軽く回す。

「星くん…朝ごはん、食べる?」

顔を洗い、少しさっぱりとした様子の先輩がキッチンの方から顔を出す。

「いいんですか?あ、俺も顔洗いたい」

先輩からタオルを受け取り、洗面所へ向かう。
鏡を覗くと顎の周りに薄っすら髭が生えている。

うわ、サイアク。
せっかく先輩といるのに。

仕方なく部屋に戻ると、ふわりとコーヒーのいい匂いが鼻をくすぐった。


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