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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第2章 RoundⅠ(喪失)♠
しかし、紗英子にはどうしても、それを受け容れることはできそうにない。望んでもけして得られないものを望むほど、愚かで空しいことはない。それよりは今、身近にあるもの、幸せを見つめて生きてゆく方が何倍も賢明だし、建設的だ。判っていながらも、なお子どもを欲しいと思ってしまう自分はやはり、相当の馬鹿なのだろう。
赤ちゃん、私の赤ちゃん。
紗英子は泣きながら、どこにいるはずもない、けしてやってくることはない天使のことを思った。まだ一片の可能性があるときなら、辛抱もできた。でも、これから先、自分は何を支えに生きていけば良いのだろう。子どももいない夫と二人だけの気の遠くなるような日々を重ねて、年老いて、やがて死ぬ。
先が判っている運命ほど退屈で怖ろしいものはない。紗英子は既に決まってしまった自分の未来に想いを馳せながら、いつまでも枕に顔を埋めて泣き続けた。
赤ちゃん、私の赤ちゃん。
紗英子は泣きながら、どこにいるはずもない、けしてやってくることはない天使のことを思った。まだ一片の可能性があるときなら、辛抱もできた。でも、これから先、自分は何を支えに生きていけば良いのだろう。子どももいない夫と二人だけの気の遠くなるような日々を重ねて、年老いて、やがて死ぬ。
先が判っている運命ほど退屈で怖ろしいものはない。紗英子は既に決まってしまった自分の未来に想いを馳せながら、いつまでも枕に顔を埋めて泣き続けた。