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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第4章 ♠ RoundⅢ(淫夢)♠ 
 この白いペアのカップは有喜菜が二人の結婚祝いにと贈ったものだった。共通の友人がわざわざ選んでくれたものだからと、紗英子も大切に愛用してきた。だが、今は、このカップを床にたたきつけて粉々にしてやりたい衝動に駆られる。
 まあ、流石にそこまではやる気はないけれど、この際、新しいペアカップを買うのも悪くはないかもしれない。有喜菜を思い出すようなものはできるだけ身近に置いておきたくない。
 そこで、紗英子はおや?と 首を傾げた。
 いつもなら、朝、コーヒーを淹れた後は、早々と新聞をひろげる直輝が何を思ったのか黙々と食べ始めている。
 結婚してから、紗英子はこの夫の癖を事あるごとにたしなめてきた。
―食事中に新聞を読むなんて、お行儀悪いわよ。今はまだ良いけど、子どもが生まれたら、躾けに悪いから止めてちょうだい。
 結局、子どもには恵まれなかったが、夫のこの癖は十二年間、ついに直らなかった。最近では、紗英子ももう言うだけ無駄だと思っている。いつか義母―直輝の母に訊ねたら、彼の父親にも、そういう習慣があったという。
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