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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 いや、今は動揺している場合ではない。しっかりしなくては、長年の夢が実現するかどうかの瀬戸際に自分は立っているのだから。
 が、いざ切り出すとなると、話の緒(いとぐち)が見つからない。話の持っていきようによっては、大失敗に終わるだろう。ここは慎重に事を運ばなくては。
 想いに沈む紗英子を、有喜菜は心配と警戒の入り混じったような顔で見ている。
 突如として歓声が響き渡り、二人の間のどこか気詰まりな沈黙を破った。
 思わずホッとして振り向くと、斜面を女の子がすべっている。
「あの制服はN中ね」
 紗英子の口からは無意識に言葉が出ていた。
「そうね」
 有喜菜が応える。
 N中は紗英子や有喜菜、直輝が通った公立中学である。
「それにしても、やんちゃな女の子ねぇ」
 紗英子は笑った。
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