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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
「さあね。こんなオバさんになったら、今時の若い子のことはてんで判らないわ」
有喜菜が心もち肩をすくめた。
「あの子たちを見てたら、思い出したの」
「思い出すって、何を?」
紗英子は今日、初めて有喜菜を真正面から見た。相変わらず、白いシャツと黒のタイトスカートが抜群のスタイルを引き立てている。
「私たちが中学生だった頃のこと」
ああ、と有喜菜が頷いた。
「そうよね。私たちも、いつもあんな風に帰ってたものね」
「私が自転車通学で、有喜菜は歩きだったよね。有喜菜はさっきの子のように、この坂を勢いよくすべるのが好きで、私ははらはらしながら見てた」
「もう、随分と昔になったわね」
有喜菜がしみじみと言った。恐らく、この瞬間には、二人は同じことを考えているはずだった。同じ制服を着て、同じ道を通い、同じ時代を生きた同士であり、仲間だ。
紗英子の中で有喜菜に対する親近感が急速に増した。今、有喜菜と自分は間違いなく同じ時間を、想い出を共有している。
有喜菜が心もち肩をすくめた。
「あの子たちを見てたら、思い出したの」
「思い出すって、何を?」
紗英子は今日、初めて有喜菜を真正面から見た。相変わらず、白いシャツと黒のタイトスカートが抜群のスタイルを引き立てている。
「私たちが中学生だった頃のこと」
ああ、と有喜菜が頷いた。
「そうよね。私たちも、いつもあんな風に帰ってたものね」
「私が自転車通学で、有喜菜は歩きだったよね。有喜菜はさっきの子のように、この坂を勢いよくすべるのが好きで、私ははらはらしながら見てた」
「もう、随分と昔になったわね」
有喜菜がしみじみと言った。恐らく、この瞬間には、二人は同じことを考えているはずだった。同じ制服を着て、同じ道を通い、同じ時代を生きた同士であり、仲間だ。
紗英子の中で有喜菜に対する親近感が急速に増した。今、有喜菜と自分は間違いなく同じ時間を、想い出を共有している。