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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
「こんなことをお願いできるのは、あなたしかいない。もちろん、本当に身勝手な頼みだとは承知してる。でも、あなたは私たちの共通の友人でもある。あなたにしかこんなことは頼めないの。お願いよ、直輝さんと私の子どもを生んでちょうだい」
「直輝の、子ども」
有喜菜のきれいにルージュを塗った唇が震えた。
「私が、直輝の子どもを産む?」
紗英子は動揺する有喜菜とは裏腹にしっかりとした口調で言った。
「そうよ、あなたに私と直輝さんの子どもを生んで欲しいのよ」
この時、迂闊にも紗英子は気づかなかった。有喜菜の口から出たのは〝紗英子と直輝の子〟ではなく〝直輝の子〟であったことに。
長い静寂があった。それでも、紗英子は返事を急かそうとは思わなかった。
誰だって、急にこんなことを言われたら、戸惑うし迷うのは当然だ。しかし、何故か、紗英子はある種の確信を抱いていた。恐らく、有喜菜は自分の頼みを断りはしない。紗英子と直輝の子どもを生むことを最終的には承諾するはずだ。
「直輝の、子ども」
有喜菜のきれいにルージュを塗った唇が震えた。
「私が、直輝の子どもを産む?」
紗英子は動揺する有喜菜とは裏腹にしっかりとした口調で言った。
「そうよ、あなたに私と直輝さんの子どもを生んで欲しいのよ」
この時、迂闊にも紗英子は気づかなかった。有喜菜の口から出たのは〝紗英子と直輝の子〟ではなく〝直輝の子〟であったことに。
長い静寂があった。それでも、紗英子は返事を急かそうとは思わなかった。
誰だって、急にこんなことを言われたら、戸惑うし迷うのは当然だ。しかし、何故か、紗英子はある種の確信を抱いていた。恐らく、有喜菜は自分の頼みを断りはしない。紗英子と直輝の子どもを生むことを最終的には承諾するはずだ。