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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
「もちろん、お礼はちゃんとするわ。友達だから、ただで生んで欲しいとか、安くしてなんてことは言わない。相場として考えられる報酬に少し上乗せして支払う。それで、引き受けて貰えないかしら」
 やはり、有喜菜といえども、謝礼のことは気になるはずだ。彼女の実家は既に往時の勢いはない。有喜菜が学生の頃は手広く商売をやっていた父親が数年前に亡くなり、跡を継いだ弟が事業に失敗した上に莫大な借金を作ったからである。
 子どももいない一人暮らしでは、慎ましく暮らせば出費は最低限に抑えられるだろうけれども、何かあっても実家を頼ることはできない状況なのだ。
 具体的な金額を提示すると、有喜菜の唇がまたかすかに戦慄いた。
「本当にやる気なのね?」
「もちろんよ。悪ふざけでこんなことを言い出したりはしないし、仕事中のあなたを呼び出したりはしないわ」
「二つほど確認しても良いかしら」
「もちろん、何でも訊いて」
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