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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第2章 RoundⅠ(喪失)♠
身長は百七十五は越えているし、学生時代からサッカーで鍛えているから、三十代後半、いわゆる〝おじさん〟と呼ばれるようになった歳でも、余計な贅肉もついていない身体は引き締まり均整が取れている。ルックスは中学時代から並外れていて、それなりに成績も良かった。
外見は韓流スターのソン・イルグクに似ているとよく言われ、会社でも後輩の女子社員たちがひそかに狙っているとか、いないとか。むろん、こんな話は直輝本人ではなく、彼が会社帰りに自宅に連れてきた部下が耳打ちしてくれたことだ。
直輝もやはり彼なりに子どもに恵まれない人生に淋しさは感じているのだろう。週に一度、町内の子どもたちを集めて小さなサッカー教室のようなものを開いている。
紗英子は滅多に行かないけれど、たまにグラウンドに行ってみると、子どもたちと一緒にいる直輝はとても楽しげに見えた。恐らく、直輝だって、子どもが欲しくないことはないのだろう。それでも、辛い治療をしてまでも、子どもは望まないという。紗英子が側にいれば、子どもは無理にいなくても良いと。
多分、紗英子はそういう風に考えてくれる夫に感謝するべきだったのだ。そして、直輝の気持ちに添い、二人の幸せを見つけるべく努力すべきだったのだろう。なのに、直輝の言葉から眼を背け、あくまでも子どもが欲しいという自分の欲望に忠実に生きた。
それが、すべての間違いの因(もと)だったのだ。もっと早くにそのことに気づいていれば、いや、気づいても気づかないふりなどしないで、直輝と二人だけで生きることを考えれば良かった。後に、自分がどれほど後悔することになるか、その時、紗英子はまだ知らなかった。
大抵、結婚記念日の何日か前には、
―今年もNホテルのディナー、予約しといたからな。
外見は韓流スターのソン・イルグクに似ているとよく言われ、会社でも後輩の女子社員たちがひそかに狙っているとか、いないとか。むろん、こんな話は直輝本人ではなく、彼が会社帰りに自宅に連れてきた部下が耳打ちしてくれたことだ。
直輝もやはり彼なりに子どもに恵まれない人生に淋しさは感じているのだろう。週に一度、町内の子どもたちを集めて小さなサッカー教室のようなものを開いている。
紗英子は滅多に行かないけれど、たまにグラウンドに行ってみると、子どもたちと一緒にいる直輝はとても楽しげに見えた。恐らく、直輝だって、子どもが欲しくないことはないのだろう。それでも、辛い治療をしてまでも、子どもは望まないという。紗英子が側にいれば、子どもは無理にいなくても良いと。
多分、紗英子はそういう風に考えてくれる夫に感謝するべきだったのだ。そして、直輝の気持ちに添い、二人の幸せを見つけるべく努力すべきだったのだろう。なのに、直輝の言葉から眼を背け、あくまでも子どもが欲しいという自分の欲望に忠実に生きた。
それが、すべての間違いの因(もと)だったのだ。もっと早くにそのことに気づいていれば、いや、気づいても気づかないふりなどしないで、直輝と二人だけで生きることを考えれば良かった。後に、自分がどれほど後悔することになるか、その時、紗英子はまだ知らなかった。
大抵、結婚記念日の何日か前には、
―今年もNホテルのディナー、予約しといたからな。