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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第2章 RoundⅠ(喪失)♠
まるで、それが神聖な儀式の始まりでもあるかのように口にする直輝だが、流石に今年はまだ一度も、それらしいことは口にしない。
まあ、紗英子がこんな状態では、ディナーなんて行けるはずもなく、ましてや三日後は退院すらも覚束無いだろう。どんなに経過が順調でも、二週間の入院は必要だとあらかじめ言い渡されているのだから。
初めから行けないものについてあれこれ話しても、かえって空しくなるだけだと思っているのかもしれない。そう考えてみれば、いかにも直輝らしい気遣いだと思えた。紗英子は直輝が何も言い出さなかったことについて、そんな風に解釈した。
十二回目の結婚記念日は、どうやら初めて自宅以外の場所で迎えることになりそうだ。自分が入院しているのだから仕方ないと思いつつも、直輝が何も言い出さないことについて一抹の淋しさを感じている紗英子であった。
複雑な想いを抱いてクリスマスツリーを眺めていると、やがて診察室の方から名前が呼ばれた。
「矢代(やしろ)さん、矢代紗英子さーん」
飾り付けられたツリーはキラキラとイルミネーションも美しく輝いている。紗英子はツリーから視線を外し、返事をして立ち上がった。
まあ、紗英子がこんな状態では、ディナーなんて行けるはずもなく、ましてや三日後は退院すらも覚束無いだろう。どんなに経過が順調でも、二週間の入院は必要だとあらかじめ言い渡されているのだから。
初めから行けないものについてあれこれ話しても、かえって空しくなるだけだと思っているのかもしれない。そう考えてみれば、いかにも直輝らしい気遣いだと思えた。紗英子は直輝が何も言い出さなかったことについて、そんな風に解釈した。
十二回目の結婚記念日は、どうやら初めて自宅以外の場所で迎えることになりそうだ。自分が入院しているのだから仕方ないと思いつつも、直輝が何も言い出さないことについて一抹の淋しさを感じている紗英子であった。
複雑な想いを抱いてクリスマスツリーを眺めていると、やがて診察室の方から名前が呼ばれた。
「矢代(やしろ)さん、矢代紗英子さーん」
飾り付けられたツリーはキラキラとイルミネーションも美しく輝いている。紗英子はツリーから視線を外し、返事をして立ち上がった。