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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
 確か、あれは午前四時くらいだったと思う。携帯に記憶させてある紗英子のナンバーを押し、息を潜めて相手が出るのを待った。
 紗英子はなかなか出ず、呼び出し音が鳴るのを待つ間が永遠に続くようにも感じられた。
 時間が時間だから、出ないのも当たり前である。そう思って諦めかけた瞬間、
―はい?
 聞き慣れた紗英子の声が耳を打った。
 刹那、有喜菜は息を呑んだ。電話をかけたのは自分でありながら、おかしな話ではあるけれど、いざ紗英子が出ると何をどう話して良いか判らなかった。
―あの、話。
 名乗りもせずにいきなり切り出したのだが、そこは長年の付き合いだから、紗英子もすぐに判ったようだ。
―ええ。
 力強い応えが返ってきて、何故か、紗英子が少しも動じていないようなのが、かえって有喜菜の心を奮い立たせた。
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