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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第6章 【後編】 ♦RoundⅤ(覚醒)♦
私はこんなにも動揺しているのに、難題を突きつけた紗英子の方は平然として、あたかも当然の要求をしたかのように構えている。
そのことにひどく傷つき、向こうがその気なら、自分も受けて立とうと決めた瞬間だった。恐らく、紗英子は有喜菜が断るとは考えてもいないのだろう。だから、こんなにも泰然としていられるのだ。
いっそのこと、この場でその裏をかいて
―やっぱり、あの話はお断りするわ。
と言ってやるのも一興かもしれなかった。しかし、有喜菜は別の道を選んだ。
私が断れないと判っているというのなら、それに乗ってあげるわ。でも、私は、けして誰にもできないことをするのよ。少なくとも、あなたにはけしてできないことを―あの男の赤ちゃんを産むのはこの私よ。
それを忘れないで欲しいわ。
そう言いたい衝動をぐっと堪え、有喜菜は心で考えていたのとは全く別の科白を口に乗せた。
―できるだけ早く進めてちょうだい。
流石に、紗英子もこの展開には面食らったようで、困惑気味の声がしばらくして返ってきた。
―有喜菜?
そのことにひどく傷つき、向こうがその気なら、自分も受けて立とうと決めた瞬間だった。恐らく、紗英子は有喜菜が断るとは考えてもいないのだろう。だから、こんなにも泰然としていられるのだ。
いっそのこと、この場でその裏をかいて
―やっぱり、あの話はお断りするわ。
と言ってやるのも一興かもしれなかった。しかし、有喜菜は別の道を選んだ。
私が断れないと判っているというのなら、それに乗ってあげるわ。でも、私は、けして誰にもできないことをするのよ。少なくとも、あなたにはけしてできないことを―あの男の赤ちゃんを産むのはこの私よ。
それを忘れないで欲しいわ。
そう言いたい衝動をぐっと堪え、有喜菜は心で考えていたのとは全く別の科白を口に乗せた。
―できるだけ早く進めてちょうだい。
流石に、紗英子もこの展開には面食らったようで、困惑気味の声がしばらくして返ってきた。
―有喜菜?