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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
 翌日、紗英子は浮かない顔で電車に乗っていた。昨夜の夫とのやりとりがまだ心に重く淀んでいたからである。
 昨夜、紗英子は直輝に事の次第を報告した。もちろん、代理母の名前は伏せ、妊娠が判明したことを簡単に告げたにすぎなかった。しかし、直輝は紗英子が期待していたような反応は全く見せなかった。
―そうか。
 ただ短く応え、逃げるように書斎へと閉じこもった。
 紗英子はただ茫然と立ち尽くしているしかなかった。むろん、元々この話に乗り気でなかった直輝だけに、自分のように狂喜乱舞するとまでは思わなかったが、せめて笑顔くらいは見せるだろうと想像していたのだ。
 有喜菜の身籠もった赤ん坊は他ならぬ自分たちの子ども、直輝と紗英子の血を引く我が子ではないか。妊娠判明を知った有喜菜が淡々としているのは赤の他人だからまだしも、当の子どもの父親であるはずの直輝が何故、ここまで冷静でいられるのか理解できなかった。
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