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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
 だが。直輝の子を孕み、生むという行為を通して、有喜菜は直輝と一体になれる。たとえ直輝自身は知らなくても、直輝の子どもを生むのは紗英子ではなく、この自分なのだから。生まれた子どもはすぐにでも紗英子に手渡すことになるだろう。それでも、有喜菜は直輝の子を産んだただ一人の女として、永遠に彼と繋がっていることができる。
 随分と歪んだ考え方だが、有喜菜は今でも直輝をひそかに想っている。二十三年前、親友であったはずの紗英子に突如として断たれた淡い恋心は気の遠くなるような年月を経てもなお色褪せることはなく、ひっそりと有喜菜の心の底で咲き続けていた。
 それは図らずも有喜菜から直輝を奪った紗英子への復讐でもあった。紗英子にはけして生めない直輝の子どもを、代わりに有喜菜自身が生むのだ。紗英子がもし、有喜菜の直輝への想いを知れば、絶対に代理母など頼みはしなかっただろう。
 有喜菜の気持ちを知らない紗英子は、まんまと有喜菜に復讐のチャンスを与えたのだ。
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