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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
 まだ二十一週なので、このまま体外に出しても無事に育つ可能性は少ないから、何もしないで様子を見てはどうかと提案された。もし不幸にもお腹の中で死んでしまったら、陣痛促進剤を打って自然分娩の形で胎児を外に出すしかない。
―恐らくは、このままでは赤ちゃんは亡くなってしまうでしょう。
 有喜菜は医師に取り縋ったという。
―先生、そんなことを言わないでください。この子はまだ生きているし、ちゃんとこうして心臓も動いています。だから、何とか少しでも助ける方法があるなら、その方法を取ってください。
 有喜菜の願いは聞き届けられ、すぐに帝王切開が行われた。胎内にいる間は何もできないが、生きて外へ出せば、わずかなりとも救命の治療はできる。このまま弱って行くのを待って死を迎えさせるよりは、一刻も早く外へ出し、できる治療を施して欲しいというのが有喜菜の願いであった。 
 しかし、必死の願いも天には通じなかった。帝王切開の手術が始まり、体外へ出される寸前まで赤ちゃんの心臓は弱々しいながらも動いていたのに、この世に生まれ出るあと一歩のところで心臓が止まった。
―健康な赤ちゃんでも、二十一週ではなかなか体外では生きられません。ましてや、このお子さんには心臓の先天的な欠陥がありました。無事に生まれても、生き抜くのは難しかったでしょう。
 医師は慰めにもならない言葉をかけた。
 三度めの妊娠は離婚する直前に発覚した。少し前から体調がおかしくて、もしかしたらそうなのかもしれないと有喜菜自身も気づいていたのだけれど、仕事の方が立て込んでおり、なかなか受診する機会がなかった。
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