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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
「また、お世辞?」
「まさか、俺が有喜菜にお世辞なんか言うわけないだろうが」
「それもそうね」
 有喜菜と直輝は顔を見合わせて笑った。
 こうして顔を突き合わせて話をしていると、時が戻ってあの時代に戻ったかのようだ。
「本当に懐かしいな」
 有喜菜と過ごす時間は、直輝をあらゆるものから解き放ってくれる。それはあの頃と少しも変わらない。有喜菜はいつも余計なことは喋らず、ただ直輝の想いを、存在をゆったりと受け止めてくれた。
 もしかしたら、自分が心から求めていたのは、有喜菜のような存在、自分のすべてを認め受け容れてくれる女だったのかもしれない。この時、直輝は生涯で初めて、紗英子との結婚に懐疑的な想いを抱いた。
 話は弾み、あらゆる方面に及んだ。互いの近況から、かつて机を並べていた中学時代の話までと尽きなかった。ただ結婚していた頃の話になると、有喜菜は美しい顔を翳らせ、口をつぐむ。
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