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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
 ふいに曲が途切れた。そこで彼は初めて、演奏が終わったのだと知った。水を打った静寂の中、マスターの拍手が直輝の半ば麻痺したような意識を破った。
 直輝は唇を噛みしめ、ピアノからまた自分の方へと近づいてくる有喜菜を凝視した。
 自分は何かとんでもない愚かな間違いを犯してしまったのではないだろうか。それが何かとまでは、はきとは判らなくても、永遠に取り返しのつかない失敗をしたのではないかという焦りと後悔の入り乱れた気持ちが直輝を苛立たせた。
「今し方の話だけど」
 直輝が切り込むのに、有喜菜は真顔で首を振った。
「あれはもう良いの。ごめんね。私も久しぶりに直輝に逢って、言わなくても良いことを口にしてしまったみたい」
 有喜菜は改めてマスターにカンパリソーダを頼んでいる。
「演奏したから、汗もかいたし、喉も渇いちゃった」
 舌をちろりと覗かせ、肩を竦めて見せる。
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