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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
お昼過ぎとあって、カフェは大勢の女性客で溢れんばかりだ。数人で談笑している若い母親たちはそれぞれ幼児や赤ん坊を連れている。三人で和やかに何やら話し込んでいる上品な老婦人たち。
白い丸テーブルにやはり、白い背もたれのついた椅子は造りそのものは丈夫だが、繊細な蔦模様がところどころ入っていて、テーブルとお揃いのデザインだ。細かな部分まで店側の気遣いの感じられる気持ちの良い店は居心地の良い空間を客たちに提供している。だからこそ、いつも満員状態に近いほどの客が来るのだろう。
有喜菜は丁度通り掛かった若いウエイターを呼び止め、ホットコーヒーとチーズケーキを注文する。
「あなたは?」
問われ、紗英子は小さな声でアイスティーをミルクでと付け加えた。
ウエイターが去ってから、有喜菜が訊ねた。
「お昼ご飯は食べた?」
「―ええ」
本当は出かける支度に余念がなくて、食べる時間がなかったのだけれど、何故か素直に口に出せなかった。
「そう、なら良かった」
有喜菜は安心したように笑い、しげしげと紗英子を見つめた。
「幾ら何でも少し痩せすぎじゃない? もう少し食べなくちゃ」
紗英子は弱々しく微笑んだ。
「まだ病み上がりだもの。その中、嫌でも食欲が出てくるでしょう」
まるで他人事のように淡々と言い、上目遣いに有喜菜を見上げた。
「有喜菜は食べたの?」
「ここに来る直前にね、上司がいつになく気前よく鰻丼でも食べないかって誘ってくれて、奢りで食べてきちゃった」
白い丸テーブルにやはり、白い背もたれのついた椅子は造りそのものは丈夫だが、繊細な蔦模様がところどころ入っていて、テーブルとお揃いのデザインだ。細かな部分まで店側の気遣いの感じられる気持ちの良い店は居心地の良い空間を客たちに提供している。だからこそ、いつも満員状態に近いほどの客が来るのだろう。
有喜菜は丁度通り掛かった若いウエイターを呼び止め、ホットコーヒーとチーズケーキを注文する。
「あなたは?」
問われ、紗英子は小さな声でアイスティーをミルクでと付け加えた。
ウエイターが去ってから、有喜菜が訊ねた。
「お昼ご飯は食べた?」
「―ええ」
本当は出かける支度に余念がなくて、食べる時間がなかったのだけれど、何故か素直に口に出せなかった。
「そう、なら良かった」
有喜菜は安心したように笑い、しげしげと紗英子を見つめた。
「幾ら何でも少し痩せすぎじゃない? もう少し食べなくちゃ」
紗英子は弱々しく微笑んだ。
「まだ病み上がりだもの。その中、嫌でも食欲が出てくるでしょう」
まるで他人事のように淡々と言い、上目遣いに有喜菜を見上げた。
「有喜菜は食べたの?」
「ここに来る直前にね、上司がいつになく気前よく鰻丼でも食べないかって誘ってくれて、奢りで食べてきちゃった」