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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
 紗英子は呆れたように肩を竦める。
「鰻丼食べて、すぐにチーズケーキ? 太るわよ?」
 脅すように言うと、有喜菜は声を上げて笑った。
「そんなこと、私はいちいち気にしないわ。食べたいときに食べたいものを食べる。人生いつ何があるか判らないんだもの。ダイエットなんて、くだらない、くだらない」
「それにしては相変わらずの見事なプロポーションね。食べたいだけ食べて、モデル並みの体型を維持できるなんて、私には到底信じられないわ」
 半ば冗談のように口にしたが、それは全くの本音であった。
 ほどなく先刻のウェイターが銀の丸盆に湯気の立つコーヒーとチーズケーキ、アイスティーをのせて運んでくる。
 早速、大きな口を遠慮なく開けてチーズケーキを頬張る友を横目に見、紗英子はストローをくわえた。
 絶対に嘘だ。特別なサプリメントを摂取しているなら別として、食べ放題に食べて、これだけの体型を維持できるはずがない。
 やはり、有喜菜は家では慎ましい食事をしているに違いない。紗英子の前では良い格好をしているだけなのだろう。
 ―と、ここまで考えて、紗英子はハッとした。
 私ったら、どうして、こんなことを考えてるの?
 直輝とは中学からの付き合いだったが、有喜菜は同じ小学校出身だ。五年生の春、有喜菜は大阪の小学校から転校してきたのだ。その頃から少し大人びたボーイッシュな少女だったが、内面も面倒見が良い姉御膚で、紗英子とは不思議にすぐ仲良くなった。家同士が近いこともあったのかもしれないが、性格がまるで対照的なところも良かったのだろう。
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