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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
「何故、紗英子は君にそんなことを?」
 有喜菜は淡く笑んだ。
「それは私にも判らない。気心の知れた女友達に自分の大切な子ども生んで貰いたいと思ったのかもね」
「だからといって―」
 またも直輝は言葉を失う。
 一体、何をどうすれば、そんな愚かなことを考えつくというのだろうか。直輝にとってそうであるように、紗英子にとっても有喜菜は小学生時代以来の大切な親友ではないのか。
 更に、有喜菜は過去に三度も辛い流産・死産を経験しているという。確かに妊娠できる身体なのかもしれないが、そんな哀しい過去を背負った女性に対して、その身体に赤の他人の子を入れて産む代理母出産をせよとは―。
 直輝は最早、有喜菜にかけるべき言葉を持たなかった。直輝にとって、代理母というのは、他人の子どもを生むために腹を貸す道具だとしか思えない。つまり、利用されているだけだとしか。
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