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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
 有喜菜の静かな声にいざなわれるように、直輝は顔を上げた。
「君はそれで良いのか?」
「構わないわ」
 有喜菜の微笑はやわらかでいながら、どこか果てのない哀しみを湛えているようにも見えた。それは昔、直輝が見た美術の教科書に載っていたモナリザを彷彿とさせる。
 直輝は元々、真っすぐな気性だ。彼は義憤に駆られながら言った。
「君にはできるだけのことをさせて貰うよ。約束どおり、紗英子には今日の話は一切しないが、出産までもその後も、必要な援助はするから、遠慮なく俺を頼ってくれ」
 これまで直輝は、代理母のことなんて考えたこともなかった。これは紗英子が勝手にすることで、自分にはあくまでも関係のないことだと思っていた。
 むろん、万が一にも治療が成功して赤ん坊が生まれたときには、血縁上の父親として果たす義務は最低限は果たそうという気持ちはあった。
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