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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
そこで、紗英子はまた我に返った。有喜菜がじいっと見つめているのだ。
「どうかした?」
「紗英こそ、どうしたの? 何だか怖い顔して睨みつけられてるような気がするんだけど、気のせいかな」
「ま、まさか」
内心、心の中を見透かされたようで慌てたし、面白くなかった。
「何で、私が有喜菜を睨みつけなきゃならないの?」
取り繕うように愛想笑いを貼り付けた。
「そうよね。ごめん、私ったら、何てことを口にしたのかしら」
有喜菜は舌を出す。見かけの妖艶さと時折、見せる子どもっぽい仕草のギャップすら、堪らない魅力に思える。これだけの良い女なら、さぞかしモテるだろうなどと、ぼんやりと考える。
「でも、良かった」
「何が?」
有喜菜は邪気のない笑みで応えた。
「だって、本当に元気そうなんだもの。心配してたのよ、これでも」
出かける前、スッピンの自分はまるで死人のような悲惨な顔色をしていた。それで、顔色が良いなどとよく言えたものだ。紗英子は探るように有喜菜の顔を窺い見たけれど、彼女の真意は向日葵の花のような笑顔の下に巧妙に隠されている。
いや、そんな風に考える自分がやはり、どうかしているのだろうか。
「化粧してるからね。多分、そのせいで多少、顔色が良く見えるのかもしれないわ」
これは全くの本音である。
「どうかした?」
「紗英こそ、どうしたの? 何だか怖い顔して睨みつけられてるような気がするんだけど、気のせいかな」
「ま、まさか」
内心、心の中を見透かされたようで慌てたし、面白くなかった。
「何で、私が有喜菜を睨みつけなきゃならないの?」
取り繕うように愛想笑いを貼り付けた。
「そうよね。ごめん、私ったら、何てことを口にしたのかしら」
有喜菜は舌を出す。見かけの妖艶さと時折、見せる子どもっぽい仕草のギャップすら、堪らない魅力に思える。これだけの良い女なら、さぞかしモテるだろうなどと、ぼんやりと考える。
「でも、良かった」
「何が?」
有喜菜は邪気のない笑みで応えた。
「だって、本当に元気そうなんだもの。心配してたのよ、これでも」
出かける前、スッピンの自分はまるで死人のような悲惨な顔色をしていた。それで、顔色が良いなどとよく言えたものだ。紗英子は探るように有喜菜の顔を窺い見たけれど、彼女の真意は向日葵の花のような笑顔の下に巧妙に隠されている。
いや、そんな風に考える自分がやはり、どうかしているのだろうか。
「化粧してるからね。多分、そのせいで多少、顔色が良く見えるのかもしれないわ」
これは全くの本音である。