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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
「そうなの?」
有喜菜はちょっと意外そうな表情だ。
「今日、ここで逢ったことは直輝さんには言わないでね」
「そう? でも、何でなの?」
これも意外そうに訊ねられ、紗英子は微笑んだ。
「彼、物凄い心配性なのよ。もう大丈夫だ、家の中のことくらいはちゃんとできるからと言っても、全然きいてくれないの。当分は無理せずにじっと寝ていろって煩いくらいなのよ」
今度の笑みは余裕だったと思う。もしかしたら、多少の優越感も滲んでいたかもしれない。
だが、有喜菜の反応は紗英子の期待していたようものではなかった。有喜菜はどう見ても心からの笑みにしか見えない微笑を浮かべた。
「相変わらず直輝はあなたを大切にしてるのね。愛されてるのよねえ」
有喜菜の反応にいささか戸惑いながらも、紗英子は鷹揚に頷く。
「そうなのかしら? よく判らないけど、大切にして貰っているとは思うわ」
有喜菜は最後のチーズケーキの欠片を口に放り込んだ。
「―幸せ?」
予想外の質問に、紗英子は息を呑む。
「判らない。長年の夢だった赤ちゃんを産むっていう選択肢もなくなったしね」
今日だけはけして弱音は吐かないと決めていたのに、思わぬ質問だったから、つい本音が出てしまった。
有喜菜はちょっと意外そうな表情だ。
「今日、ここで逢ったことは直輝さんには言わないでね」
「そう? でも、何でなの?」
これも意外そうに訊ねられ、紗英子は微笑んだ。
「彼、物凄い心配性なのよ。もう大丈夫だ、家の中のことくらいはちゃんとできるからと言っても、全然きいてくれないの。当分は無理せずにじっと寝ていろって煩いくらいなのよ」
今度の笑みは余裕だったと思う。もしかしたら、多少の優越感も滲んでいたかもしれない。
だが、有喜菜の反応は紗英子の期待していたようものではなかった。有喜菜はどう見ても心からの笑みにしか見えない微笑を浮かべた。
「相変わらず直輝はあなたを大切にしてるのね。愛されてるのよねえ」
有喜菜の反応にいささか戸惑いながらも、紗英子は鷹揚に頷く。
「そうなのかしら? よく判らないけど、大切にして貰っているとは思うわ」
有喜菜は最後のチーズケーキの欠片を口に放り込んだ。
「―幸せ?」
予想外の質問に、紗英子は息を呑む。
「判らない。長年の夢だった赤ちゃんを産むっていう選択肢もなくなったしね」
今日だけはけして弱音は吐かないと決めていたのに、思わぬ質問だったから、つい本音が出てしまった。