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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
後悔しても遅い。何とか体勢を立て直そうと次の言葉を探していると、有喜菜は小さく首を振った。
「紗英は幸せだよ。そんなこと言っちゃ駄目。大切にしてくれる旦那さんがいて、家族がいる。今の幸せを大切にしなきゃ。責任感が強くて優しいあいつのことだから、今、直輝は全力で紗英を支えようとしていると思う。だから、そんなことを言わないで、直輝の気持ちにもなってやって」
その時、気づくべきだったのだと思う。有喜菜の言葉の端々に滲み出る切ない感情の揺れに。
「それでね。相談があるのよ」
紗英子は、どこか浮かぬ表情になってしまった有喜菜には構わずに続けた。
「私たち、十日前が結婚記念日だったんだけど、今年はまだ何のお祝いもできていなくて」
「確か毎年、披露宴をしたホテルでディナーするとか話してなかったっけ?」
「そう。でも、今年は私が入院してたから」
「それは仕方ないよね」
「でも、今年に限って、直輝さんが何も言ってくれなかったの。いつもなら、決まって結婚記念日はどうするって訊ねてくれるんだけどね」
「かえって言わない方が良いと思ったんじゃない? 直輝は見かけによらず、繊細なところがあるから」
「紗英は幸せだよ。そんなこと言っちゃ駄目。大切にしてくれる旦那さんがいて、家族がいる。今の幸せを大切にしなきゃ。責任感が強くて優しいあいつのことだから、今、直輝は全力で紗英を支えようとしていると思う。だから、そんなことを言わないで、直輝の気持ちにもなってやって」
その時、気づくべきだったのだと思う。有喜菜の言葉の端々に滲み出る切ない感情の揺れに。
「それでね。相談があるのよ」
紗英子は、どこか浮かぬ表情になってしまった有喜菜には構わずに続けた。
「私たち、十日前が結婚記念日だったんだけど、今年はまだ何のお祝いもできていなくて」
「確か毎年、披露宴をしたホテルでディナーするとか話してなかったっけ?」
「そう。でも、今年は私が入院してたから」
「それは仕方ないよね」
「でも、今年に限って、直輝さんが何も言ってくれなかったの。いつもなら、決まって結婚記念日はどうするって訊ねてくれるんだけどね」
「かえって言わない方が良いと思ったんじゃない? 直輝は見かけによらず、繊細なところがあるから」