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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第9章 RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
 直輝が昔を懐かしむ口調で言った。
「あの頃、俺は本当に君に惚れていた」
 今、初めて耳にする心情の吐露に、有喜菜は問い返さずにはいられなかった。
「何で、紗英の告白を受け容れたの?」
「それは―」
 直輝は少し逡巡を見せ、思い切ったようにひと息に言う。
「紗英子から、君には別に想う男がいると聞かされたからだ」
「ええっ」
 思わず苦し紛れの悲鳴のような声が上がった。
 また、沈黙。その間、直輝の端正な面にはあらゆる感情がよぎっていった。
 悔恨? 疑惑? それとも、歓びか怒り?
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