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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
「知っているって、まさか、あなた―」
それから先、言葉は続かなかった。動転しきっている紗英子とは裏腹に、直輝は落ち着いた口調で言った。
「とにかくS市のクリニックに急ごう。今は、そちらが先だ」
―俺はもう、すべてを知っている。
先ほどの直輝の言葉が紗英子の心を射貫くようだった。
取り急ぎマンションを出てN駅に向かい、電車に乗った。S市まで片道二時間を要する。急行の二人がけの座席に並んだ夫はクリニックからの電話の内容をかいつまんで説明した。
昨日深夜に、有喜菜がにわかに産気づいたこと。しかし、当人も規則的に襲ってくる激痛が普通ではないと気づいたらしく、携帯で救急車の出動を要請した。
駆けつけた救急隊員は急を要すると判断、近くの総合病院へ運んだものの、そこで〝常位胎盤早期剥離〟と診断された。
それから先、言葉は続かなかった。動転しきっている紗英子とは裏腹に、直輝は落ち着いた口調で言った。
「とにかくS市のクリニックに急ごう。今は、そちらが先だ」
―俺はもう、すべてを知っている。
先ほどの直輝の言葉が紗英子の心を射貫くようだった。
取り急ぎマンションを出てN駅に向かい、電車に乗った。S市まで片道二時間を要する。急行の二人がけの座席に並んだ夫はクリニックからの電話の内容をかいつまんで説明した。
昨日深夜に、有喜菜がにわかに産気づいたこと。しかし、当人も規則的に襲ってくる激痛が普通ではないと気づいたらしく、携帯で救急車の出動を要請した。
駆けつけた救急隊員は急を要すると判断、近くの総合病院へ運んだものの、そこで〝常位胎盤早期剥離〟と診断された。