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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
 現行の日本の法律では、この子を紗英子と直輝の実子として戸籍に入れることはできないのだ。でも、そのことは承知で代理出産という道を選択したのだから、悔いは一切ない。
 ピンクの小さなカバードレスがそれでもまだ大きく見えるほど小さな赤ん坊は出生体重、2,700gと記されていた。体長は48.5㎝。
 顔はこれもまた、ぶかぶかのピンクのニット帽を被らされているので、定かではないけれど、紗英子というよりは直輝に似ているように見えた。特に眼許などは写し取ったように直輝に似ている。大きくなったら、さぞかし綺麗な子になるだろう。
 紗英子がガラス越しの我が子との対面に感慨深く浸っていたその最中、直輝が近づいてきた。彼はただ黙って横に並んで赤ん坊を眺めていた。
 紗英子はある種の期待に満ちた気持ちで夫を振り返り、見上げた。
 これですべてがうまくいく。長い間、欲しいと願っていた我が子を授かり、自分たち夫婦は本来あるべき姿に戻ることができるだろう。
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