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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
「無理だ。俺はもう、お前とは歩いていけないよ」
苦渋に満ちた顔で断じた夫が紗英子はまるで見知らぬ他人のように思えた。刹那、彼女の中で閃くものがあった。
「有喜菜、有喜菜ね? あの子が代理母だっていうことを自分からあなたに告げたのね。あれほど直輝さんには話さないでって頼んでおいたのに、あの裏切り者、泥棒猫!」
口汚く罵る紗英子を、直輝が哀れむような眼で見つめた。
「止さないか。有喜菜のことは俺たちの離婚には一切関係ない。確かに俺は」
そこで、直輝はひとたび言葉を句切り、うつむく。そのままの体勢で言葉短く告げた。
「俺は有喜菜を必要としている」
その言葉に、紗英子はカッとなった。夫はあくまでも紗英子を見ようとはしない。
「有喜菜は必要としていて、私はもう必要ではない、つまり用済みっていうことなのね? あの女は自分が代理母だって告げて、あなたの気を引いたんだわ」
苦渋に満ちた顔で断じた夫が紗英子はまるで見知らぬ他人のように思えた。刹那、彼女の中で閃くものがあった。
「有喜菜、有喜菜ね? あの子が代理母だっていうことを自分からあなたに告げたのね。あれほど直輝さんには話さないでって頼んでおいたのに、あの裏切り者、泥棒猫!」
口汚く罵る紗英子を、直輝が哀れむような眼で見つめた。
「止さないか。有喜菜のことは俺たちの離婚には一切関係ない。確かに俺は」
そこで、直輝はひとたび言葉を句切り、うつむく。そのままの体勢で言葉短く告げた。
「俺は有喜菜を必要としている」
その言葉に、紗英子はカッとなった。夫はあくまでも紗英子を見ようとはしない。
「有喜菜は必要としていて、私はもう必要ではない、つまり用済みっていうことなのね? あの女は自分が代理母だって告げて、あなたの気を引いたんだわ」