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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
直輝が踵を返そうとするのに、紗英子は早口で声をかけた。
「赤ちゃんは、赤ちゃんを抱いてはいかないの?」
直輝の歩みが止まる。彼は首だけをねじ曲げるようして振り返った。
「抱いてしまえば、余計に別れの辛さが身にしみる。いつか、もし許されるなら、その子が大人になった時、俺と対面させてくれ」
直輝の眼には光るものがあった。泣いているのかもしれない。
今度こそ、彼が背を向ける。大好きだった彼が、十二歳のときから今までずっと見つめ続けてきた彼が、私から去ってゆく。
紗英子は大声で泣きわめき、直輝を引き止めたい衝動と必死に闘った。
「有喜菜と―結婚するの?」
最後にこれだけは訊いておきたいと声をかけた。
「赤ちゃんは、赤ちゃんを抱いてはいかないの?」
直輝の歩みが止まる。彼は首だけをねじ曲げるようして振り返った。
「抱いてしまえば、余計に別れの辛さが身にしみる。いつか、もし許されるなら、その子が大人になった時、俺と対面させてくれ」
直輝の眼には光るものがあった。泣いているのかもしれない。
今度こそ、彼が背を向ける。大好きだった彼が、十二歳のときから今までずっと見つめ続けてきた彼が、私から去ってゆく。
紗英子は大声で泣きわめき、直輝を引き止めたい衝動と必死に闘った。
「有喜菜と―結婚するの?」
最後にこれだけは訊いておきたいと声をかけた。