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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
 直輝はまたしても立ち止まったが、今度は振り返らず向こうを見たままで言った。
「今はまだ、はっきりと決めたわけではないが、多分、そういうことになるだろうと思う」
 曖昧な口調でぼかしたのは、紗英子の気持ちを推し量ってのことだろう。直輝は昔から一本気なところがあった。こうと目標を決めたら突き進むような性格なのだ。
 やがて廊下の角を曲がり、直輝は永遠に紗英子から去っていった。
 もう多分、彼と逢うことは二度とないだろう。紗英子は自分に歓びをもたらしてくれたはずの赤ん坊から視線を逸らし、直輝が去ったのは別方向へと歩いていった。
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