この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
N駅の地下街は大勢の買い物客で溢れていた。紗英子はいつもは横眼に見て通り過ぎるとある店の前で立ち止まる。
中に入ると、周囲に様々な時計が陳列されていた。中ほどにショーケースがあり、いかにも高級そうな腕時計が並んでいる。
「何かお探しでいらっしゃいますか?」
早速、販売員が寄ってくる。振り返ると、二十代後半ほどの若い店員が愛想笑いを浮かべていた。
「男性へのプレゼントにしたいのですけど、何か適当なものはありますか?」
今でもまだ直輝が腕時計をコレクションしているなんて信じられない。百歩譲って昔は集めていたのかもしれないけれど、今は少なくとも、そんな趣味はないはずだ。もし、そこまで腕時計に執着しているのであれば、ずっと妻として彼の側にいた紗英子が気づかないはずはないのだから。
何よ、自分には旦那もいないからといって、適当なことばかり言って。
と、どうしても心の中で有喜菜に怒りが向いてしまう。
嫌な感情を追い出すように勢いよく頭を振ると、若い販売員が怪訝そうにこちらを見ていた。
「ご主人さまへのプレゼントでいらっしゃいますね?」
念を押され、紗英子は頷く。
「腕時計をコレクションしているらしいんですけど、やっぱり、そういう人は眼が肥えているだろうから、ブランド物とかの方が良いんでしょうか?」
中に入ると、周囲に様々な時計が陳列されていた。中ほどにショーケースがあり、いかにも高級そうな腕時計が並んでいる。
「何かお探しでいらっしゃいますか?」
早速、販売員が寄ってくる。振り返ると、二十代後半ほどの若い店員が愛想笑いを浮かべていた。
「男性へのプレゼントにしたいのですけど、何か適当なものはありますか?」
今でもまだ直輝が腕時計をコレクションしているなんて信じられない。百歩譲って昔は集めていたのかもしれないけれど、今は少なくとも、そんな趣味はないはずだ。もし、そこまで腕時計に執着しているのであれば、ずっと妻として彼の側にいた紗英子が気づかないはずはないのだから。
何よ、自分には旦那もいないからといって、適当なことばかり言って。
と、どうしても心の中で有喜菜に怒りが向いてしまう。
嫌な感情を追い出すように勢いよく頭を振ると、若い販売員が怪訝そうにこちらを見ていた。
「ご主人さまへのプレゼントでいらっしゃいますね?」
念を押され、紗英子は頷く。
「腕時計をコレクションしているらしいんですけど、やっぱり、そういう人は眼が肥えているだろうから、ブランド物とかの方が良いんでしょうか?」