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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
販売員は少し考える素振りを見せ、ショーケースを鍵で開けて一つの時計を取り出した。
「これなどは、いかがでしょう?」
「何というブランドかしら。私、そういうのにはまるで疎くて」
販売員は茶髪のロングヘアで、化粧が濃い。今風のメークなのだろうが、アイシャドーをこれでもかというほど塗った顔はまるでパンダそのものである。
しかし、外見に似合わず、気さくで親切だ。
「これは正確に言うと、ブランド品ではありません。ブランドといえばブランドともいえますが、京都の凜工房という小さな工房で凜太さんという職人が一つ一つすべて手作りで作っている稀少な腕時計なんです」
「凜工房―」
「ご主人さまが時計のコレクターでいらっしゃるなら、もしかしてご存じかもしれません。でも、一般的にはあまり知られてはいないブランドですね」
店員はビロード張りのトレーに乗せたその時計を指し示して見せた。一見、何のことはない腕時計で、シルバーの縁に丸形の時計がはめ込まれている。バンドは本革らしく、艶やかな黒が上品な光沢を見せていた。
正直、紗英子には、これのどこに希少価値があるのか理解できない。やはり、見る眼がないのだろう。
「これなどは、いかがでしょう?」
「何というブランドかしら。私、そういうのにはまるで疎くて」
販売員は茶髪のロングヘアで、化粧が濃い。今風のメークなのだろうが、アイシャドーをこれでもかというほど塗った顔はまるでパンダそのものである。
しかし、外見に似合わず、気さくで親切だ。
「これは正確に言うと、ブランド品ではありません。ブランドといえばブランドともいえますが、京都の凜工房という小さな工房で凜太さんという職人が一つ一つすべて手作りで作っている稀少な腕時計なんです」
「凜工房―」
「ご主人さまが時計のコレクターでいらっしゃるなら、もしかしてご存じかもしれません。でも、一般的にはあまり知られてはいないブランドですね」
店員はビロード張りのトレーに乗せたその時計を指し示して見せた。一見、何のことはない腕時計で、シルバーの縁に丸形の時計がはめ込まれている。バンドは本革らしく、艶やかな黒が上品な光沢を見せていた。
正直、紗英子には、これのどこに希少価値があるのか理解できない。やはり、見る眼がないのだろう。