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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
店を出て地下街の出口に向かって歩きかけたときのことである。
向こうから〝あっ〟と小さな声が聞こえ、紗英子は眼を見開いた。
「おばちゃん!」
見れば、やってくるのは家族連れらしい。五歳くらいの男の子と赤ん坊を連れた、まだ若い両親だ。紗英子には、その男の子の顔に見憶えがあった。ついこの間まで入院していたクリニックで見かけたあの子―〝お腹に赤ちゃんがいるの?〟と紗英子に問いかけ、母親に叱られていた子どもである。
確か、拓也といったか。
拓也もまた紗英子を憶えていたらしく、母親の手を振りほどいて、ぴょんぴょん跳ねるように駆けてきた。
「おばちゃん、また逢ったね」
拓也は嬉しげに顔を輝かせて紗英子を見上げている。
可愛い子だと思った。随分と人懐っこい。
「元気にしてた?」
紗英子もまたしゃがみ込んで拓也と同じ眼線の高さになった。
「うん」
「あ、そうだ」
紗英子はふと思いつき、肩に提げたバッグから先刻のチョコレートを出した。右手に持った蒼い風船と一緒に拓也に渡す。
「これね、たった今、貰ったばかりなの。良かったら、どうぞ、。おばちゃんからのクリスマスプレゼント」
「うわあ、ありがとう」
拓也はくりくりとした黒い瞳をくるくると回し、嬉しげに風船とチョコレートを受け取った。
向こうから〝あっ〟と小さな声が聞こえ、紗英子は眼を見開いた。
「おばちゃん!」
見れば、やってくるのは家族連れらしい。五歳くらいの男の子と赤ん坊を連れた、まだ若い両親だ。紗英子には、その男の子の顔に見憶えがあった。ついこの間まで入院していたクリニックで見かけたあの子―〝お腹に赤ちゃんがいるの?〟と紗英子に問いかけ、母親に叱られていた子どもである。
確か、拓也といったか。
拓也もまた紗英子を憶えていたらしく、母親の手を振りほどいて、ぴょんぴょん跳ねるように駆けてきた。
「おばちゃん、また逢ったね」
拓也は嬉しげに顔を輝かせて紗英子を見上げている。
可愛い子だと思った。随分と人懐っこい。
「元気にしてた?」
紗英子もまたしゃがみ込んで拓也と同じ眼線の高さになった。
「うん」
「あ、そうだ」
紗英子はふと思いつき、肩に提げたバッグから先刻のチョコレートを出した。右手に持った蒼い風船と一緒に拓也に渡す。
「これね、たった今、貰ったばかりなの。良かったら、どうぞ、。おばちゃんからのクリスマスプレゼント」
「うわあ、ありがとう」
拓也はくりくりとした黒い瞳をくるくると回し、嬉しげに風船とチョコレートを受け取った。