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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第4章 ♠ RoundⅢ(淫夢)♠ 
 二日後はクリスマスだった。
 部屋の灯りを消した淡い闇の中で、キャンドルの灯りだけが揺れている。
 紗英子が焼いたブッシュド・ノエル。樹の切り株を模したケーキは純白(ホワイト)の雪(・スノー)を思わせる生クリームをたっぷりと塗り、紅いチェリーとサンタとトナカイの砂糖菓子で飾り付けられている。
 ケーキを囲む紗英子と直輝の傍らでは、愛らしいツリーが全身に煌めくイルミネーションを光の衣のように纏い、いかにもイブの夜らしい雰囲気を作り出していた。
 蝋燭の他にはツリーの灯りだけしかない、幻想的な空間に、直輝の端正な顔が浮かび上がって見える。
 これで二日前の出来事がなければ、申し分のないイブの夜になるはずであった。
 あれから、二人の間には常に緊張した空気が漂っている。それは例えるなら、細い針でほんのひと突きしただけで音を立てて割れそうな風船にも似ていた。
 それでも大人同士のことだから、こうして何もなかったような顔で毎日を何とかやり過ごしている。
 よく離婚するには結婚を決意するときの倍以上のエネルギーを要するといわれる。あれは満更、嘘ではないだろう。現に、紗英子も今から直輝と別れて、また別の人生を生きようという気にはなかなかなれない。
 また別の男と出逢い、その男を好きになり、新しい家庭を築く。しかも、その選択肢に子どもを持つという夢は付属しない。
 かといって、結婚もせずに一人だけでひたすら歳を重ねていくというのも、あまりに空しく淋しすぎた。それに、三十五にもなった女が何の仕事をして生きていけば良いというのか。
 紗英子は地元のN大の英文科を卒業し、一年間は市役所で臨時職員として働いていた。一年勤務した後、直輝と結婚したのだ。
 つまり、大学を卒業してからは殆どの時間を家庭で過ごしたと言って良い。そんな世間知らずで何の特技も資格もない主婦に何ができる? 
 今から人生をやり直すという煩雑なことをやるくらいなら、少々我慢しても、このまま結婚生活を維持する方がはるかにマシだ。
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