この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第4章 ♠ RoundⅢ(淫夢)♠
直輝の差し出された大きな手のひらには、不似合いなほど小さな箱が乗っていた。深紅の艶やかな紙で包まれ、緑のリボンが愛らしくかかっている。
「今年は結婚記念日も祝えなかったから。少し奮発しておいた」
その声音にはほのかな甘ささえ滲んでいて。到底、わずか二日前に夫婦にとっては致命的な喧嘩をしたとは思えないような様子である。もし、これが演技なのだとしたら、直輝は容貌だけでなく、演技力もソン・イルグク級だということになる。
夫の気持ちが理解できないまま、紗英子も無理に笑顔を作った。
「メリー・クリスマス」
用意しておいた細長い箱を直輝に差し出す。
「これは?」
直輝が片眉だけを器用にはね上げて見せる。これは演技ではない。長年の付き合いで、直輝が愕いたときは、この表情を見せるのは知っている。
まあ、十三年の結婚生活で紗英子が直輝に記念日の贈り物をしたのはこれが初めてなのだから、彼が愕くのも無理はない。
「私からのプレゼント。いつも直輝さんから貰ってばかりだったでしょ。だから、今年からは私も何か用意しようと思って。急に思いついて買ったから、たいしたものは用意できなかったけど」
「今年は結婚記念日も祝えなかったから。少し奮発しておいた」
その声音にはほのかな甘ささえ滲んでいて。到底、わずか二日前に夫婦にとっては致命的な喧嘩をしたとは思えないような様子である。もし、これが演技なのだとしたら、直輝は容貌だけでなく、演技力もソン・イルグク級だということになる。
夫の気持ちが理解できないまま、紗英子も無理に笑顔を作った。
「メリー・クリスマス」
用意しておいた細長い箱を直輝に差し出す。
「これは?」
直輝が片眉だけを器用にはね上げて見せる。これは演技ではない。長年の付き合いで、直輝が愕いたときは、この表情を見せるのは知っている。
まあ、十三年の結婚生活で紗英子が直輝に記念日の贈り物をしたのはこれが初めてなのだから、彼が愕くのも無理はない。
「私からのプレゼント。いつも直輝さんから貰ってばかりだったでしょ。だから、今年からは私も何か用意しようと思って。急に思いついて買ったから、たいしたものは用意できなかったけど」