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スケベ爺ゼウスの女の尻を追いかける旅
第7章 レートー

「これで準備は万端だのう!」
ポセイドーンがそう言うと、初めて足を踏み入れた妹の島に岩がちで草木もまばら、見るからに不毛そうなその土壌にレートーはそっと呼びかけました。
「妹よ、あなたの上でお産をさせてもらっていいかしら?もし我が子の出生地としてここに神殿が建てられたら、きっと人間たちがたくさんの供物を捧げにやってきて、あなたを聖地として崇め、様々な財宝で潤わせるようになるわ。ねえ、あなたにとっても悪い話ではないでしょう?」
すると大地の下から優しい声が返ってきました。
「おなつかしい姉様、いらっしゃい。喜んであなたの御子様方のご誕生をお迎えしますわ。でも、実は少し不安なの……というのも、あなたのご子息はとても偉大な神になられるはずの方、きっと誇りもお高くていらっしゃるでしょう。そのような方がお生まれになってすぐこんな貧相な小島をご覧になったら、岩だらけの土地を蔑まれて私をまた海中深く蹴り込まれるのではないかしら……。本当に、ここに神殿を建ててくださる?」
「もちろんですわ!!絶対に誓うわ。我が子には必ずここに立派な神殿を建てさせ、世界中のどこよりもこの島を大切にさせます」
その誓いを聞いたオルテュギアー島は安心し、喜んで姉を受け入れました。
レートーは1本の棕櫚の木が生えた小高い丘(後にキュントスの丘と呼ばれる場所です)に登り、帯を解いて棕櫚の木に身をもたせかけ、いよいよ出産の支度を始めました。
しかし、ポセイドーンまで出動したこの大騒動が海上をくまなく監視していたイーリスの目に触れないはずがありません。
禁令をかいくぐってオルテュギアー島がレートーの産所となったことを知ったイーリスは慌てて女王ヘーラーのもとに飛んで帰り、恐れおののきながら事の次第を報告しました。
知らせを受けたヘーラーは激怒しましたが、島の名を聞くと大変渋い顔をしました。
「オルテュギアーというと、あの女神アステリアーね。困ったこと……私はあのひとには辛く当たれないのよ。もちろん、今回しでかしてくれたことはとても具合の悪いことだわ。でもあの女神は浮気なゼウスの誘いを受けても私の閨を汚さなかった……神々の王の妾となるよりも海を漂う岩となる方を選んでくれたのですもの。あの借りがある以上、罰を下すことは出来ないわ……」

