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真夜中の贈り物
第9章 クレヴァスガーデンの淫らな花壇 後編
 杖の構えは胸の前。

 攻撃を防ぎ、即座に反撃の詠唱を発動できるように。

 移動時に足を取られぬようすり足でゆっくりと歩を進める。

 微かな空気の動きになびく髪の動きにさえ注意を払う。

 もちろん、その間ずっと分身を維持したままだ。

 だが、それは最低限の集中力でこと足りる。

 いつになったら、襲撃は行われるのか?

 まだか?

 まだ?

 嫌な間の取り方だ。もうどれぐらい経つ?

 まさか逃げたとか?

 疑心が迷いを生むが、それを振り払う。

 この状況では迷った方が負ける。

 敵は必ず潜んでいる。

 どこかに身を隠してこちらの様子をうかがっているのだ。

 獲物の羽虫が近寄るまでじっと葉の上で待つカエルのように。

 うっかりをやればおぞましい舌がひゅっと伸びて絡め取られしまうのだ。

 そう、だから、しびれを切らしてはいけない。

 緊張を途切れさせることなく、平常心で。

 キオの事も気になるが今は助けに行くべきではない。

 まずは目の前の敵……それを倒してからだ。

 命に別状はないようだし。

 焦っては駄目……。

 焦ったら負ける。

 いいえ、この私が万一にも負けるはずなどありませんが。

 それでも……。

 足もとをすくわれてはいけいない。

 でも……。

 ちょっとこれ長すぎない?

 いくらなんでも。

 ねえ。

 そろそろ出てくる頃合いじゃないの?

 阿吽の呼吸って、あるでょ?

 いくらなんでも長すぎでしょう!

 ねえちょっと!

 ちょっと、いつまで待たせるつもり?

 オカシイでしょ!

 変よ。

 疲れますのよ、ずっと警戒体勢とってるのは!

 どれだけ待たすの!

 ちよっとは空気読みなさいよ!

「一体いつになったら……」
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