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真夜中の贈り物
第9章 クレヴァスガーデンの淫らな花壇 後編
「ゲロフフフ……お主は花となったのじゃが」

(花……ですって?)

「お主は花……陽の光を浴びるのが好きな美しき大輪じゃが」

「陽の光……?」

 その言葉は心に触れた。エヌフィーヌが復唱する。

「そうゲロ……植物の成長に欠かせぬものじゃが……」

「お日様……暖かい……眩しくて……キラキラ、気持ち良い……」

「……ホレ、もっと陽当りの良い所へ向こうてみてはいかがじゃが?」

「そう……そうね……ここは陰だわ……」

 まだ陽は高い。

 急峻なクレヴァスの深部とはいえ、ほぼ真上から降り注ぐロンブロンの太陽が、地の底の中央付近に陽だまりを作っていた。

 ふらふらとした足取りでエヌフィーヌが歩み寄る。

「ああ……素敵……もっと……もっと陽当りの良い場所はないのかしら……」

(私は何を言っているの? これが……これが植物の心? 植物の考えになってしまったというの?)

「残念じゃが、これ以上陽射しの良い場所はないじゃが。だが、もっと陽を浴びる良い方法はあるじゃがよ」
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