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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ
晩餐会の催される会場へと向かう間道で、アサージが急に後ろへと馬を下がらせ、それを咎めようとした瞬間、待ち伏せていた野盗の群れがノヴァリスたちに襲い掛かって来たのだ。
勢いに任せた、集団体当たりを喰らって横倒しになる馬車。
応戦するノヴァリスが近づけないでいるうちに中から引きずり出され、悲鳴を上げる枢機卿夫人。そして……
「俺達が苦しんでいるのに、のうのうと遊び呆けがって! 民の恨み、思い知れ!」
「ひぃっ……ヒイイイイイイーッ!」
逃げ出そうと向けたその背に、野盗の錆びた、しかし重たい斧の一撃が降り降ろされ、グシャリと骨の砕ける嫌な音がした。血しぶきが思いもよらぬ高さまで噴き上がり、天の朱色と混ざり合う。
「お……奥方様!」
叫んで駆けつけようとしたノヴァリスは、気を取られたその一瞬の隙を突かれた。後頭部に鈍い痛みを憶え、そこで彼女は意識を失った。
何事が起きたのか?
考えるまでもなかった。
「アサージ……こ、この襲撃は貴方の手引きなの?」
囚われの身でありながらも、ノヴァリスは険しい目を怒りに燃やし、一人だけヘラヘラしている副隊長を睨みつける。