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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ
体が温まると心も落ちつく。
薔薇の香りもどうやら気のせいではなさそうだ。ノヴァリスに持ち前の強い意思と気高さが戻ってきた。
と、閉ざされていた扉が不意に開きフェリックスが部屋の中へと姿を現した。手下は連れず、一人だ。
慌てて裸身を湯船に沈めて隠したノヴァリスに向かって、フェリックスが大きな布きれを放り投げる。
「体を拭け、着替えはこちらだ」
バサリ、と寝台の上に投げ出されたのは、商売女やいかがわしい酒場の酌婦が着るような、ずいぶんと薄手の、扇情的なヒラヒラとしたドレスだった。
「着替えろと言っておきながら、外に出ていってはくれないのね」
「……鍵、とやらを洋服のどこかに隠されては手間なのでな」
睨みつけるノヴァリスに対してビクともしないで答えるフェリックス。
「それはここにはないわ。さっき調べさせて……わかったでしょう」
「どうかな……アサージには気の毒だったが、女の体には隠し場所が多いというのはもっともだと思うがね」
「そっ、そんな変な場所に鍵を隠して行動したりなんかするわけないでしょう!」