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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ

 ラ=フェール卿というのは、数少ない真の正義を知る領主であると聞き及んでいる。枢機卿と並ぶ人望の持ち主だが、しかし、平和と民の安寧を希求するも、その統率力をかわれて戦地から戦地へと駆けまわらされてばかりで王都で枢機卿の右腕として腐敗をほ正すことに力を貸すことは叶わずにいるのだとか。

 広がりゆく戦乱の嵐。
 この国の前途にたちこめる暗雲に思いを馳せ、ノヴァリスは暗澹たる気持ちとなった。

 できることならば、自分もその闇を切り払うため、これからも枢機卿と共に働きたかった。しかし、それも……。

「猊下、この度の失態、いかようにもご処罰を。奥様のお命を奪われたばかりか、王都に災禍を招くなど、近衛隊長としてあるまじき……」

 再び床を見つめて呟くように言う。

 どのような処分であっても、過酷すぎるということはないと思っていた。
 たとえ死をもってしても償えるものではない。

 だが、返って来たのは意外な言葉だった。

「……ゆっくり休むがよい、ノヴァリス・シュープルーズ。そなたのために部屋を準備しておいた」

「し、しかし、猊下!」
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