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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ
「すでに、そなたの事については大臣らにも伝わっておる。勿論、償いとして極刑を求める声は大きい。だが、私はそんなを失いたくないのだ」
「そ、それは……」
「しばらく、この離宮に身を隠しておるがよい、さあ、こちらへ……」
いざなわれるままに、奥の回廊を通って枢機卿の私室へと足を運んだノヴァリスは、その部屋の中にいた人物を見て目を見張った。
「フェ……フェリックス!」
血まみれの姿となった野党の頭――ノヴァリスを抱き、愛狂わせたあの男が、無惨にも椅子に縛り付けられていたのだ。
彼女の声にピクリと身震いし、フェリックスが頭を上げる。
殴打の痕も生々しい腫れあがったその顔には笑みともつかぬ奇妙に歪んだ表情が浮かべられていた。
「ノヴァリス……か……」
駆け寄ろうとして、背後で扉にガチャリと錠をかける音を聞き、振り返るとそこには意味槍気な笑みを浮かべた枢機卿がじっとノヴァリスを見つめていた。
「猊下……こ、この男は……」