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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ
「そうだ、首謀者のフェリックス・シュビリだ。捕えてここに監禁していたのだ」
「どうして……」
何故、わざわざ離宮に?
疑問が頭をかすめたとき、ふわりと薔薇の香りが鼻をよぎった。
フェリックスのアジトで嗅いだの全く同じ、どこか心を落ち着かなくさせる匂い。
「ふふ、気づいたかね、この香り……これはこの部屋にいけさせている薔薇……南国エチオピールの産の希少で特殊な種なのだが、その香りだよ」
「特殊な……?」
「そう、この薔薇の香りは女を狂わせるという。よく娼館などて使われているらしいな。とんな淑女でも淫売に変えることができるという。実際、重宝する花だよ」
「猊下、何をおっしゃって……」
崇高な人格者であると誰もが信じて疑わぬ彼の口から出るとは予想だにしない下品な話題にノヴァリスは耳を疑った。