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真夜中の贈り物
第16章 ボイストレーニング
「実は複式呼吸のコツがよくわからなくて……私、先輩たちみたいに大きな声が出てないと思うんです」
「そうかい? もう一度、発声してみてくれかな?」

 そう言って、中央あたりの客席に腰を掛ける鏡花。

「あ……お時間、大丈夫なんですか? 他に用事あるんじゃ……」
「ハハッ、随分気を遣うんだね。問題ないよ。それに、お芝居の事ならなんでも、私にとっては大切な用事だよ。亜優クンだって次のコンクールのために練習しているんだろう? それなら、稽古を見ないわけにはいかない」

 そう言われると気が楽になる。亜優は言われた通りにもう一度、基本の発声をワンセット繰り返した。

「なるほど、わかったよ」

 鏡花が立ち上がり、舞台に上って亜優の傍らにやって来る。

「キミは腹式呼吸をお腹で息をするイメージでやっているんだ、亜優クン」
「え……違うんですか?」
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