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Memory of Night
第7章 夏祭

「ゆかたって、動きづらいと思わねえ?」

 ずっと同じ表情で見つめてくる少女がおもしろくてからかうような口調で聞くと、少女は一度目をぱちくりさせた。

「でもカワイーもん」

 ゆかたの袖をひらひらさせ言う少女に、宵は軽く首をかしげた。

「そうかー?」
「カワイーの!」

 少女が両手をブンッと振って主張する。
 その拍子に提げていた手から金魚が落ちそうになってしまい、宵は慌ててそれをキャッチした。

「おまえ……金魚落としたら死ぬって」
「あ……」
「あじゃねーよ。ほら、ちゃんと紐掴んで」

 宵が少女の指を開き、金魚の紐を持たせてやる。
 途端に少女の顔がぱーっと明るくなる。

「ありがとー!」

 とびはねるように言って、ふいに不思議そうに宵を見る。

「……お姉ちゃん、男のチトみたいだねぇ。しゃべるのー」
「うん……まぁ」

(男だし)

 という言葉をぐっと呑み込んで、

「親は?」
「どっか行っちゃったァ」
「……って迷子?」
「んーんー」

 少女が首を振る。

「お昼だから焼きそば買うのー。オルスバン」

 そう言って、得意げに自分の胸を叩いた。
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